蝋燭
ただのみきや

意識は一本のロウソク
辺りの闇を仄かに照らし
朧げにでも識別し得たもの
それが全て 世界の己の だが
寄り添い合えばより遠く闇は開け

意識は一本のロウソク
にわかな風に脅かされて
人も景色も歪んで見えた
眠りの覆いの下へ逃れても
夢見ゆらゆら影絵が踊る

意識は一本のロウソク
生の残りを減らしながら長いこと
見慣れた景色を照らしていたが
刹那大きく揺らめいて 終には
白い煙ひとすじ 闇に紛れて

意識は一本のロウソク
この光の届かぬ先に何がある
思い描けば静けさに
見つめる真中は澄み渡り
ああ闇在っての己かと




             《ロウソク:2018年5月5日》







自由詩 蝋燭 Copyright ただのみきや 2018-05-05 18:41:33
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