ブックストア・キャリー
竜門勇気


長い道を歩くのは
そのさきに本屋があるからさ
首輪のない猫たちが
僕を追い越していく

光の指す場所を
指差す子どもたちが
公園の水飲み場で円卓を作ってる

濁った水がいくつか
雲の間に見えて
すぐ太陽に置き換わった
いつまでもこんな空の下で
歩き続けれればいい

むせ返る甘さは
夏を迎える準備
裏返る反射は
今日を終えるために
歯を食いしばる

首輪のない猫が
僕を振り返るだろう
無数の光子を浴びて

この長い道を
決死の気分で歩いてる
昨夜見た夢を思い浮かべながら
小声の妄想と歩いてる
無いのかもな
本屋なんて
無いのかもな
夏なんて

むせるたびに膝に手をついて
アスファルトが滲んで戻る
渦巻く妄想が僕を喜ばせようと嘲笑う
無いのかもな
本屋なんて
無いのかもな
夏なんて



自由詩 ブックストア・キャリー Copyright 竜門勇気 2018-04-30 00:11:39
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