喉もと
印あかり

暗く清い女の子だった

こんなに、水のように柔らかい裸足では
どこへも逃げだせないだろうと思っていた

彼女は星の連なりを蹴飛ばし
夜の幕を裂いて、去った
綺麗な笑顔の残像は流れ星のように
わたしの目を焼いた

日の光の下でも溶けなかった

彼女はまごうことなき人間であった

淫らさを脱ぎ捨て
正しく、激しい流れをつくり
そこに自らを投げ入れた

彼女は破れなかった
過ちを洗い流し、香りをなくし
女をなくしたように高潔で
その一方
女であることを恥じなかった

たくさんの人に尊ばれ
たくさんの人を笑顔にした
たくさんの人は、彼女が何者かすら
考えることなく飲み下すようになった

わたしだけが惨めだった


自由詩 喉もと Copyright 印あかり 2018-04-29 18:04:20
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