希望と過ごした日々のこと
TAP

それはどんより曇ったある日のことでした
庭の方から大きな物音がしましたので
訝しんで見に行きますと 
希望が倒れておりました
身にまとった服は汚れており ところどころ破けておりまして
顔は痣だらけで 背中から生えた白い翼は見るも無残に 血が滲んでおりました

家の中に運び込んで 布団に寝かせ
どうしたのかと希望に訳を訊きますと
ある時は 散々期待させやがって と殴られ
ある時は 信じて努力したのに骨折り損だった と蹴られ
ある時は お前のせいで人生が狂ってしまった と羽をむしり取られ
ほうほうの体で逃げている途中 家の庭に落ちたとのことでした

心身ともに大変弱っている様子でしたので
傷の手当をしてやり
清潔な服を与えてやり
その日は白湯を飲ませ
次の日はお粥を食わせ
優しく介抱してやったのでした

なんと満ち足りた日々であったことでしょう
心は軽く 弾むようで
希望がみるみる回復していく姿を見ると
嬉しくて 嬉しくて
いつまでも世話をしてやりたいものだと 思ったのでした

もう大丈夫 今までありがとう
希望はそう言うと 翼を大きく広げ
雲ひとつない空へ ゆっくりと飛んでいきます

すぐに心は暗い情念で 真っ黒に汚れてしまいました
激しい憎悪と悲哀に襲われて 涙まで流れる始末でした

希望めがけて 石を投げてやろうかと思いましたが
どうしてこういう気持ちになったのか わかっていましたので
すんでのところでやめまして 歯を食いしばり 希望を見送ったのでした
何を投げても届かないくらい 高く高く 昇ってしまうまで

いつしか青空に溶けてしまったかのように 希望は見えなくなりました


自由詩 希望と過ごした日々のこと Copyright TAP 2018-04-28 00:53:22
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