届かない手紙
文字綴り屋 ひじり

届かない手紙だとわかっているけれど
あなたへ書こうと思う
どんなに悲しくても
どんなに寂しくても
受け入れるべき時がくる
呆然とし拒否して
怒りで身悶えしても
私の時間は停まらないのだから
諦めて片付ける準備をする
見渡せば全てが
乱雑に散らばっている
一つ一つを手にとっては
箱に収めようとするけれど
その度にじっと見入ってしまう
でもそれでいいんだよね
あの時私にとって
キラキラとした瞬間だったんだもの
そうやって時間をかけながら
ゆっくりと片付けて行く
積もった埃とともに
トゲトゲしく角ばった気持ちを
振り払い
一番大事だった純粋な気持ちだけを
取り出す
それは小さく脆い
注意深く丁寧に
一つ一つを箱に収める
スッキリと片付けると
まるで何事もなかったかのようで
寂しく切なくなる
でもあなたと私の時間は
もう二度と重なり合うことはない
わかっている
理解しなくちゃならない
今すぐに
全部を忘れ去ることはできなくても
少しずつ少しずつ
嫌だったことを捨てて行けばいい
そして最後に良かったことだけが
残されればいいんじゃないか
それだったら
重荷にはならないはず
いずれにせよ
新しい日々には
新しい出来事
新しい時間が待っている
私の両手に持てるのはほんの少しだけ
私が背中に背負えるのはそれなりのものだけ
だからこうして
届かない手紙を書いている
私自身への慰めのため
自分が過ごした時間を
愛おしみながら手離すために


自由詩 届かない手紙 Copyright 文字綴り屋 ひじり 2018-04-27 23:12:45
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