鬼灯
こたきひろし

鬼灯が実をつけると 中身を上手に抜き取って口に含み舌を使って
姉はよく鳴らしたものだ

それは遠い日の記憶 私は幼かった

朝 目を覚ますと 家のなかはがらんとしていて家族は誰もいなくなっていた
私は母をしきりに呼んだが返事はなかった 心細くなった私は泣き出した
泣きつかれて泣き止んだ私は そっと起き出して立ち上がりふらふらと歩き出した

家の外に出ると 狭い庭の隅には袋をつけた鬼灯が風に吹かれていた
母も父親も三人の姉も気配が消えていた
私はそれからたった一人ぼっちになってしまった


自由詩 鬼灯 Copyright こたきひろし 2018-04-24 21:38:18
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