海鳴り
こたきひろし

海を見たくなって車を走らせた
海水浴場の駐車場に車を止めた
季節は外れていて風は冷たかった

それでも車はまばらに停車して 人が砂浜に降りていた
日はくれて夕の闇が迫っていたのに
恋人たちは肩を寄せあっていた

海鳴りが聞こえた
鳥が鳴きながら飛んでいた
水平線は遥かに遠く
私は海に飲み込まれてしまうかもしれない

私は砂浜に降りてはいかなかった
死者の霊が海から這い出して来る
そんな想像をしてしまい
震えた

海に呼び出されて来たけれど
引き込まれそうで怖くなった

帰りたいと思った
明日は晴れるだろうか
明日は来るだろうか

空を見上げた私は一人ぼっち


自由詩 海鳴り Copyright こたきひろし 2018-04-23 07:25:43
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