焚き火の終わり
本木はじめ

五時間に一本のバス錆び付いた車窓の外にひろがる田畑


田園のかなたに案山子見える朝わたしも案山子に見えるのだろう


遊ぼうよねぇ遊ぼうよと絡みつく室外機には幾百の蔦


ひとりふたりさんにんよにんと離れ行き春の棲み処となった故郷


祖父祖母ともなかほおばるあの頃の私に要らぬものばかり持つ


自転車は風と同義語あの頃は長髪だったあなたのわたし


登校の時とは違うトンネルの色や臭いに怯えた夏夜


訳ありの恋人たちが逃れ来た岬の壁に描かれた蝶


木々そして木々掻き分けて廃校のタイムカプセル埋めた校庭


お茶の葉を摘めば香りはひろがってすべてを捨てたあの日も消える


幼少時日常だったはずが今非日常と映る鳥居か


朽ち果てた森のベンチと雨の庭交互に出てくる夢を見た春


制服をきみと燃やした卒業の夜の焚火の終わりの続き




短歌 焚き火の終わり Copyright 本木はじめ 2018-04-22 21:32:42
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