いとおしさ
小川麻由美

陽光に花びらが透ける
いずれかの方向から来る花の香り
比較的晴れた日の出来事
雨の日といえば
水たまりの数々の輪
雨音という楽器の音に耳をそばだてる
曇がもたらす
色の変化 ふたつとない形に見入る
雪の白 雪の無数の結晶
穏やかな天候はなぐさめてくれる

これは ひとつしかないんだよ
これは 今しかないんだよ
これは はかないんだよ

何かが囁くように告げる

あなたの横顔
あなたはたったひとりだと教えてくれる


感情のメーターが動きを示す
切ない喜びにあふれる
日常が神々しく思えるが
日常に変わりはないという驚き
いとおしきものは日常に無限に在る
そう思えた瞬間 
いとおしい


自由詩 いとおしさ Copyright 小川麻由美 2018-04-20 21:24:59
notebook Home 戻る  過去 未来