エスキス8
オキ

О

*痩せ蛙

夜を通し
朝になっても
まだ
痩せ蛙が
啼いている
こうなると
蛙の身が心配で
「そんなに無理しないで
永く生きてくれ」
 と彼は言った

*菫

あまりにも小さ過ぎて 幼子は菫を目に
留めないではいられなかった
幼子は菫を空の弁当箱に
土と一緒に詰めて帰ると
「ママこれ、摘んできた」
と言うのを忘れて、遊びに出てしまった
ママは弁当箱を開けてびっくり! 菫は
土の下から ほんのり顔を出していた

*鳥の声

春を惜しむ
鳥の啼き声は
舌足らずだ

*遊歩道

仔犬をバスケットに入
れて連れては来たが
遊歩道には
似た仔犬が
いっぱいいて
仔犬が迷子になり
そうで
バスケットを開けず
そのまま持ち帰った

*鳶

春の鳶は
突っ込む先も
青い空だ
もし白雲でも浮かんでいたら
翼をひっかけ
空中分解する

*鯨

鯨は
生きている幸いを
背中から噴きながら
ゆったりと
沖を行く
鯨は図体だけでなく 
心も大きい

*鶯とさくらの枝

鶯が啼いている
声の響きに
さくらの枝が震えている
それとも美声に連動して
鶯の体が揺れるから
枝が震えるのか
分らない
しかし鶯が飛び立った今も
まだ枝が揺れている
枝に花をいっぱいつ
けて春風に震えている
もしかすと この風と
一体となった春のシンフ
ォニーなのかもしれない

О


自由詩 エスキス8 Copyright オキ 2018-04-20 12:52:12縦
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