えびカレー
藤鈴呼


旦那作のディナー

最後の最後まで 
迷惑と言う名の置き土産を残しつつ
後ろ髪を引かれて来た夜

不思議なスパイスを絡めたようなカレーの香りが
鼻先をかすめた

一仕事を終え 帰宅したならば
エビの殻むきと 幻魚の下処理に翻弄される覚悟で
玄関を開けたから 余計に広がる有り難さ

口当たり良く まろやかな甘さは
箱に記載されている 中辛とは異なるようで

不思議な角度で頬を染めた感動も一入
天ぷら粉を散らしたゲンゲに一塩ふりかけて

涙の代わりに呑み込むは 小骨
途中で見つけた小さな吸盤

これ・・・ イカ? いや タコだよ
ちょっと漏れた笑顔以上に頬が歪む

唇が歪むのは もう御免だ
心が凍てつくのは もっと御免だと

何度も運んだシルバーが 舌先の火照りを
ゆっくりと 癒して往く

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自由詩 えびカレー Copyright 藤鈴呼 2018-04-20 11:47:45
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