すすけたヨモギ猫のうたう
Lucy

くしゃみが出そうなほど明るい日差し 
塀を飛び降り路駐の車の腹の下にでも
潜り込みたくなるような午後

どの家の狭い庭にも
クロッカスがガンガン咲いて
クリスマスローズの蕾が気取ってほころび
チオノドクサも光を集める

チューリップはまだまだ
水仙も
桜もまだ
木立の枝もまだ冬の色

だけど確実に春なのは
雪のない地面
腹をこすりつけても
ねころがっても濡れない乾いた舗道の暖かさ

これをどんなに長い時間
ありえない夢のように思い描いたことだろう

羽毛のような薄い雲が舞う青空を
ちょっと泣きたいような気持で
見上げながら

埃っぽい風に目がちかちかしても
去年の春よりわずかに衰えた身を
カラスの影に
いともたやすく追い越されても・・





自由詩 すすけたヨモギ猫のうたう Copyright Lucy 2018-04-18 20:10:37
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