冷たい桜の花びら
坂本瞳子

桜の花びらが散り尽きてしまったら
なにが起きるのだろうか

今抱えている不安すべてから
解き放ってくれるだろうか

一歩前に進むことはできるだろうか

桜の花びらは冷たい

無数の別離わかれや出会いを
見守っているふりをして
温もりを伴うことなく
春だというのに

横殴りの強い雨を降らせ
花を散らし
大地を汚し
川面を埋めて
春の嵐だと誇張する

桜の花びらは冷たい

後ろを振り向くことなく散り去る
物音立てず
影も落とさず
萌ゆる薄黄色の月が光を放つなか
ひらりひらりと舞うように
温もりなど持ち合わせぬその花弁を
燃ゆる蝶の羽のごとくにはためかせ
炎立たせて
堕ちてゆく


自由詩 冷たい桜の花びら Copyright 坂本瞳子 2018-04-13 20:42:04
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