白と園
木立 悟







あちこちから
出てくる猫
ガードレールの羊
見もしない猫


あちこちで何かが倒れ
あちこちで何かが外れ
崩れ こぼれ 流れ
道を路を径を横切る


電線と鉄柱に満ちた部屋から
青い光が時おり昇り
曇に笑みを描いては
午後を夜に曳いてゆく


言葉のかたちにならないもの
かけら 羽
オルゴール
ひと息に ひと息に砕け降る


何かを捨てる仕草をしながら
変わることのない寒さに怯える
人以外の国の王女
ただ一度きりの冬の夢を見る


細い光の源が
降る歌に迷い 迷いつづけて
ひとつまたひとつ
手のひらに着く


冬は双子
王女はひとり
海へゆく灰
径に置かれた三つの冠


街にも原にも接しない
低い壁に囲まれた園
凍ったままの足跡が
空を淡く映していた



















自由詩 白と園 Copyright 木立 悟 2018-04-10 11:01:01縦
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