アザレア
ヤスヒロ ハル

アザレアの咲き誇る
とある五月のことでした

金色の髪の兄妹と痩せ細った母親が
手を繋いで歩いています

母親がお兄ちゃんに言いました
『女の子には、いつも可愛いって言ってあげるのよ。好きなひとの前にいるとき、女の子は一番可愛い自分であろうと頑張ってるんですから』

続いて母は妹に言いました
『優しい男のひとには、ちゃんと好きって伝えるのよ。男のひとは自分を好きって言ってくれる女性を守ってくれるから』

すぐにお兄ちゃんは妹に
妹はお兄ちゃんに
母から教わった言葉を言いました

3人は手を繋いで
笑いながら歩いていきました


それからすぐに
母親はいなくなってしまいましたが
彼女の言葉は兄妹の中で生き続けました

母親が旅立ったのは
アザレアが咲き誇る
とある五月のことでした

かの国の
アザレアの花言葉が相応しいような
そんな五月のことでした


自由詩 アザレア Copyright ヤスヒロ ハル 2018-04-08 09:51:47
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