私の体に
こたきひろし

父親が危篤だと自ら電話してきた
病院から電話していると言ったが
なんだか元気そうだったから
笑ってしまった

悪い冗談はよせよ
と言ったら
これが冗談だったらお前なんかに電話しねぇ
冗談じゃないから電話してるんだ
もうみんな集まってるんだ
お前も早く来いよ
早く来ねえと父ちゃんの死に目に会えねえぞ

兄ちゃんに代わるから話を聞いてみろ
本当だ 昨夜親父が風呂場で倒れちまってよ
脳溢血だった 医者はあぶねえから家族を呼んだ方がいいって言ってるから
順順に連絡してお前が一番最後になっちまった
親兄弟にさんざん迷惑かけて来たお前が一番最後にされてどんな気持ちだ
当然だよな

なんだよそれ酷いな あんまりじゃないか
だけど脳溢血で倒れたのに父ちゃん口が回るじゃないか
おかしくねぇか?
と言ったら

細かい突っ込み入れるな?どうでもいいだろう
直ぐ来るか来ないかだ
あとはお前の勝手にしろ

それで私は必死に起き上がろうとしたんだが
体がどうにも言うことをきかない
金縛りにあってしまっていた

おまけにアパートの外も中も真夜中
そして春の嵐
ついてないや
ついてないや


自由詩 私の体に Copyright こたきひろし 2018-04-01 07:30:44
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