花火大会の夜
秋葉竹



その夜店のトウモロコシは
あたたかくって
なんどか塗った醤油の香りが
香ばしくって
チープなくせに割高な値段設定は、
その夜の特別なお祭りの熱気代も
込み込みなんだよね?

楽しいから、まぁ、いいか、
って、納得しちゃうんだよね?

そういう夜が、ある。
ひとつの世界で、ある。

仰げば、
あふれ出てしまっている星々の煌めきが、
キンキンと鳴りながら地上に降りそそいでいる。

ひとつの世界が、ある。

永遠をものがたる宇宙の果ての果て。
届きうる目を、知識を、憧憬を、無駄とみなし、
ただそこにある現実を守るしかない
やるせない人間どもの、地表の一島嶼がある。

そこに国境はなく、
ただの平等に吹きすぎる熱い風があり、
どこへ行こうと、明るい未来を守る、
優しすぎる神様を思って、
おもい、ねがい、いのる、人間どもがいる。

あ、花火が上がる、
上がるよ。

真夏の花火大会に、宇宙の、
冷たすぎる漆黒がにじみ出す空に、
打ち上げられた一輪の花が咲き、
いちばん大切な美しい夜を、
色とりどりに飾るだろう。


自由詩 花火大会の夜 Copyright 秋葉竹 2018-03-28 06:29:13
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