ぜったいにしあわせになる方法を知っているという大きな嘘をきみは大きく落書きをして
秋葉竹



二年前、あの戦争が始まる日、
きみは真正面から語った。

むかしから知っている街の
夕暮れ時、
真っ赤に染まらないコンクリ壁の
向こう側の街で、
きみの言葉が世界の幸せを奪ったのだった。

なにか思い出の話をした
幸せの話だけじゃ、軽すぎて。

なにか忘れられない話をした
過去が逃げて行く赤ん坊の
ハイハイよりゆっくりとした進み方で。

なにか忘れてはいけない話をした
雪の街をたぐり寄せる
夢の最期をブックマークしておくように。


それなのに
現実の暮らしに燃やされた灰は
雪の街に浄化されて一度、
静かな笑顔に怯えて空に逃げるしかない。

雪が舞った昨夜この花を
白色の化粧で整え、思い出にして
忘れないだろう、煙草で痺れた舌で
はしたないけれど、この花を、
舐めてごらん、知ることもなく
感じてしまうだろう、
ホンモノの雪はあまいんだって。

きみがとなりの街に居てくれて、よかったよ。
壁の向こう側の
知らない街の本屋で
立ち読みした本のように
きみの人生がしあわせであれば、それは、

それは一粒一粒が小さな嘘だが、
粉雪が感じる最期の一粒だけは、
ぜったいしあわせになる方法を
知っている、そんな大きな嘘まで
この壁の外側には、なぜか達筆で
大きな嘘が、大きな文字で
落書きされて、消されることはない。

けれど、
明日はまた雨になるだろう。











自由詩 ぜったいにしあわせになる方法を知っているという大きな嘘をきみは大きく落書きをして Copyright 秋葉竹 2018-02-18 09:29:04
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