プロメーテウスのおバカさん
佐々宝砂

火を盗ってきたから
ここで炎が燃えているのだと
プロメーテウスは言うのだけれど
プロメーテウスはおバカさんだから
火から離れて星を見ている

もちろん星はたいてい火なのだけれど
そうじゃない星もあるけどそれはさておき
とりあえず星はとっても遠い

遠い火
近い火
火にもいろいろあるけれど

プロメーテウスのおバカさんは
遠い火が好き
手に入らない火が好き
がんばらないと手に入らない火が好き

プロメーテウスのおバカさんはきっと知らない
私たちにごく近いところで
いえ私の内部で
火が燃え盛っていることを知らない

生まれたばかりのほかほかの赤ん坊でなくても
なにか知り染めたばかりの若いのでなくても
熱意などなくても

ここにはいつも火がある
私たちの細胞は常に
私たちが生きている限り燃え続け
プロメーテウスのおバカさんは星を見る

私だって
火の番をしなくていいなら星を見る


自由詩 プロメーテウスのおバカさん Copyright 佐々宝砂 2018-02-17 22:18:08
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