Cold Song
もとこ

夕闇が頬張る曇天
無音の圧迫
うるさい

堕落しはじめた桜の花
無音の連打
うるさい

放棄された母の神殿に
散らばった音楽
うるさい

背伸びした指先が
神の逆鱗に触れる
ああ、うるさい

早く夜にならないかな
百戦錬磨のカメラマンたちが
日光写真でオーロラを追う夜
闇の中で桜たちが
吸い取った命を咀嚼しては
抜け殻を吐き出す夜に

その前に子どもは、
早く寝なさい、と言って
母はアタシの首を絞める

この真夜中は
永劫と癒着している
ねえ聞こえる?
オフトゥンにくるまるアタシと
フォトンの海を漂う水母の
砂時計を介さない共鳴が

それは春をすり抜けて
アタシから体温を奪い
無音の眠りへと誘い込む

だから起こさないでね
朝が来るまでは
死んでいたいの

桜たちだけが見守っている
レーメーを待ちきれぬ
淡き死に顔


自由詩 Cold Song Copyright もとこ 2018-02-16 21:51:52
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