長瀞
藤鈴呼

とろとろの眠気を抱いて通り過ぎた芝桜
一枚一枚の花びらが妙に奥ゆかしくて
ふわりと笑えるくらいには近づけぬ
頃合いを見計らい オール片手に君が
ゆっくりと瞳を合わせるように
擦れ違う 揺れ惑う 紛うことなき愛しさに
言葉が詰まる

擦りおろし林檎のように薫り立つ丘の上
ハミングを重ねたら不思議な穴から流れる音色
乾いた陶器のような楽器
見た事も 聞いた事も無い筈なのに
心に響くのは何故だろう

固いミルフィーユを岩畳と呼ぶ地域
風化せぬ堆積岩は何処の国へと飛び立った
見付けられた嬉しさに
見付かってしまった やるせなさに
口笛ひとつ

今夜のお供が決まる
一つ目は とろろ芋
二つ目は 蓮根
最後の一つが決まらない
今 種を植えるから
来春まで ゆっくり待って 頂戴よ

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自由詩 長瀞 Copyright 藤鈴呼 2018-02-15 08:13:17
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