谷川俊太郎さんの詩から学ぶ 効果的な書き方 (3)
片根伊六

言いかえれば普通なんだがそれが曲者さ
普通ってのは真綿みたいな絶望の大量と
鉛みたいな希望の微量とが釣合っている状態で
たとえば日曜日の動物園に似てるんだ
猿と人間でいっぱいの

『続・谷川俊太郎詩集』p.71


普通とは、軽い「絶望」が大量にあるとの、重い「希望」が少量あるのとが釣合っている状態?
普通とは、猿と人間でいっぱいの日曜日の動物園に似ている?

何か説明しにくいものを、なんとかして伝えようとした時に、(苦し紛れに)出てきた例えなのでしょう。

けっきょく、谷川さんが感じている「普通」がどんなものか、正確には分かりません。
でも、なんとなくその言葉が気になって、考えさせられます。

「普通に見えているものも違う視点から見れば異常に見える」ということかな?

みんなが「同じ重さで釣合ってる」と単純にとらえているものが、大量の軽いものと少量の重いものが、たまたま釣合っているという異常な状態なのかもしれない。

猿と人間であふれかえっている日曜日の動物園の光景を見て、なんでみんな異常だと感じないのだろう? 私も含めて、なんであれを普通の風景だと受け止めてきただろう?

と、谷川さんの意図と合っているかどうかは分かりませんが、なんらかの強いメッセージを受け取ったのは確かだと思います。

上に引用した行の後に、1行空けて、次のように続きます。

とにかく葉書を書くよ
葉書には元気ですと書くよ
コーラを飲んでから

『続・谷川俊太郎詩集』p.71


谷川さんの文章は軽やかで、「これは大事なことだから、ぜひとも理解して欲しい」と言った気迫はまったくありません。

「私の言っていることが伝わったかどうか分からないけど、とにかく葉書を書くよ」といった感じです。

自分の頭の中で発見したもの、まだ世界中の誰も気づいてないかもしれないもの、おそらくまだ誰も言い表したことのないもの…、そんなものを比喩や例えを使って、なんとか書き表そうとすることは、一か八かの賭けのようなものです。

何か面白いイメージなり考えなり浮かんだら、ダメ元で、気軽に書いてみてはどうでしょう?

意図は正確に伝わらない可能性が高いですが、苦し紛れに比喩や例えをひねり出しているうちに、運が良ければ、面白い文章になっているかもしれません。


散文(批評随筆小説等) 谷川俊太郎さんの詩から学ぶ 効果的な書き方 (3) Copyright 片根伊六 2018-02-14 13:24:43
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