私の父
しょだまさし

今日父を知った


厳しい父が嫌で
高校卒業をしたら
家を出て独りで生きる
と決めた

上京して
親の了承を得ず結婚し
子を授かった時
一度だけ母に
連絡したことがあり

幾度か一人で会いに来た

それから数年後

酒と借金まみれの
亭主と別れ帰郷して
友人宅に居候していたが
今日娘を連れて
自宅に戻ることにした

裏庭に回るとビオラが
まだ肌寒い風に
揺られている

縁側から降り
緩慢な仕草でサンダルを
履きながら父は
視線を合わさず
おかえりと小さく
呟き続けて言う

「あなたはだぁれ?
そうか、良い名前だね
私がおじいちゃんだよ
ずっと会いたかったよ
やっと会えたね」

父の穏やかなその顔を
見続けられなくなり
もう一度ビオラを
眺めたが鮮やかな
花色は霞んでぼやけ
形をなさない


私は今日父を知った


自由詩 私の父 Copyright しょだまさし 2018-02-13 20:35:01
notebook Home 戻る  過去 未来