ひとさらい
為平 澪

人攫いが家に来た
革靴はいて背広着て
お父ちゃんを借金のかたに連れ去った

人攫いが家に来た
病気ばかりする子はいけないと
私を家に帰しに来た

人攫いは呟いた
いつまでも この稼業じゃ儲からない、と。

   街にはびこるスポットライトの巨大な電子看板
   ネオンの空とレインボータワーが 色と高さを競い合い
   地上でテールライトが長い尻尾の残灯を燻らす
   街頭にも路地裏にも道先案内人のスマホが喋り
   同じ顔したビルの窓辺にチカチカ光るスライドショー
   横顔だらけの会社員、一夜漬けの説明会

           ※

   街がサーカス小屋になった今、
   子供をさらって何になろう
   街が眩しくなった今、
   誰も人攫いを怖がらず、
   誰でも人攫いの顔をして、
   すべてで人攫いを馬鹿にする
     
           ※

私の父を 怖い顔で連れて行った人攫い
私の手を引いて 心配そうに家に帰した人攫い

      (私、くだらない大人になりました
      (今からでも どこかに攫っていただけますか  

私は人攫いと手を繋ぎ 
温かな、暗い所へ行きました


自由詩 ひとさらい Copyright 為平 澪 2018-02-13 20:10:50
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