虹男の顛末
神坏弥生(涛瀬チカ)

虹男の顛末 涛瀬チカ改め神坏弥生

虹が空に現れた日
男は空へと昇ってみたいと思う
飛んで、飛んで、飛び上がり
スプリングのテントに跳ねながら
高く飛び、回転を繰り返しながら
高く、高く空を目指し
飛び上がり続ける
時々聞こえるのは
Do you flying?
Do you flying?
女の低い声
Yes. Yes.
Yes. I doing now!
ある瞬間、次元が切り替わり
男は回転中に空に向け
解き放たれ
浮上する
霧散する水蒸気の中
太陽の下で
男は虹色の光を浴び、垂直な姿勢を保ちながら
くるくると様々な回転角で
円を描き、遊泳する
空の中で水を得た魚になり
泳ぎ続ける
雨雲の、逆さまの水のなか
またしても重力には逆らえず
雨滴のひとつに閉じ込められ
雨となり地上へと落ちてゆく
湖に落ちた彼は滴から脱け出し
手を櫂にかき分け足を上下に動かし
気づけば、一匹の魚となって
今では人の形をとどめていない
細長い体を速く左右に動かして泳ぎながら
湖の底で、静かに呼吸している


自由詩 虹男の顛末 Copyright 神坏弥生(涛瀬チカ) 2018-02-12 23:41:00
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