風雪
末松 努

さっと
拾い上げて行く
まるで
風が
降り積もった粉雪の
上澄みをさらって行くように
わたしたちの
真実を
積雪の中に
置き去りにして

そうして駆け巡る冷風が
冬の
いたずらなら
許せたのかもしれない

権利が力を蓄え
氷柱のように
大きく伸び
尖ったさきから
垂れていく水は
大気中の煤煙を吸った
麗しくも
ざらざとした舌触りの

それでもなお
蒸留水と呼ばれ
笑顔で見つめる
村人の子らのはしゃぐ姿に
力は
なんのためらいもなく
力尽きたように見せ
落ち(あるいは 落として)
かれらを
刺そうとするのだろうか

暗雲に雷は鳴り
家々に籠もるひとびとの
団欒を彩るテレビ放送さえ
霞む蒸気を出し始めた頃
一人に向くネット放送には
渇いた電波が宿りはじめる
見通しの良さが
わたしたちの色彩を狂わせていく

世界はこんな色であったか

気づくことさえ拒む
雪原の下の真実


吹き荒ぶ
その音さえも
いまは
ミュートのボタンに
おさえつけられている
かの
ようだ


自由詩 風雪 Copyright 末松 努 2018-02-12 09:04:55
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