ふたつのないもの
あおい満月

絵のない文字
文字のない絵が
視界のなかを流れていく
その流れは
どんどん速くなり
この手のひらさえも
見えなくなるくらい
包んでしまう

絵のない文字
文字のない絵が
紙を飛び出して
この机上をぴょこぴょこと
とびまわる。
その姿には音はないし
体温すらもないが
目にははっきりと見えている

絵のない文字
文字のない絵は
光の加減によって
身体の色を変える
瞳は芥子の実のように小さく
口は蜥蜴の舌のように細いが
何を食べているのかもわからないが
骨格だけはしっかりしている

絵のない文字
文字のない絵は
いつも何かを狙っているのか
恐れているのか
全身をこわばらせて
狭い食器棚の隙間の影を睨んでいる
睨むことで恐怖を喰い荒し
一晩で浄化させ透明をたもつのか

絵のない文字
文字のない絵よ

おまえは、
誰だ


自由詩 ふたつのないもの Copyright あおい満月 2018-02-01 22:17:55
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