月食
しょだまさし

祖父は生きている
話しかけても反応はない
2018年1月31日の夜
病床の窓から見えている
皆既月食の様子を
リアルタイムで
語り聞かせている

復員してから今日まで
誰にも明かされていない
過去の無言の語り部となった
彼に残る丸い弾痕を
優しく手で撫でながら
少しずつ欠けて
無くなる月を仰いでいる


自由詩 月食 Copyright しょだまさし 2018-02-01 18:10:30
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