都会の雪
oban1974

暖かいマンションの外から、
都会の雪化粧が見えた。

私は幸せだ。
信じられないくらい幸せだ。

幸せが怖いと誰かが言ったが、
今の私には幸せが寒い。

暖かな暖房でホカホカの部屋で、
惜しげもなくティッシュを取り出し、
豪快に鼻をかんだとき、
一体どうしてこんな生活が成り立つのか、
不思議でたまらなくなる。

窓から見下ろすと
道ばたの老婆が
凍った残雪に足を取られる。

それを見たときに感じた幸せに、
私は凍える。

私が今、見ている景色は、
積み重ねられた雪を踏みにじる、
あどけない少女の足跡のようなもの。

罪はない。
それでも、踏みつけられた雪は、
例えか弱き少女のものであっても、
泥に塗れることは変わらない。

そして、雪が元の白さに戻ることは、
もう、ないのだ。


自由詩 都会の雪 Copyright oban1974 2018-01-31 18:20:49
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