中古の朝を宿す
虹村 凌

銀色の腸に詰め込まれていく
銀色のソーセージが回る
押しつぶされた細胞はノンアイロンじゃないから戻らないし
形の崩れた細胞たちは空の色を忘れてしまった

ガラスのようなビルディングに映る空と空は境界線が曖昧だ
大きな行灯のように光の絶えないビルディングは空を飲み込んでいるのだ
だから境界線がわからないの
影がビルディングに短く伸びていく

寒い肉を詰め込まれて
白い絵の具で夕焼け空が
新しい空に塗られていくので
それを宿したまままた
中古の朝を迎えに行く

見覚えのある朝
中古の朝
繰り返し鉄の腸に詰められて
回る
よじれた細胞は新しい空を歪ませて行く
白い絵の具で書かれた空が夕焼けになっていく
それは幾度となく見た中古の夕焼け
誰でも知っている夕焼け
何度も白い絵の具が夕焼けに溶けていくけれど
何度かいてもそれは中古の夕焼けにしかならない

曖昧な境界線の空を切り裂いて欲しいのに白い絵の具はなにも書かない

白色の腸、白色のソーセージ
形の崩れた中古の朝
境界の曖昧な絵の具
銀色の絵の具
よじれた夕焼け
誰もが知っている
を宿したまま回る銀色の朝


くりかえし


自由詩 中古の朝を宿す Copyright 虹村 凌 2018-01-31 01:32:38
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