首筋と雲
藤鈴呼


触れてはいけぬ世界の扉をそっと開けると
ブルウに満ちた世界が広がっていて
そっと息を吐いたつもりが
余りにも早い雲の動きに目を奪われて
そのまま 立ち尽くしてしまう
そんな 夢を観た

瞳を開けたら 眩いばかりの赤
沢山の命が乱舞する
ランプ代わりに乱反射する陽射しを観たかい
水面と藻に挟まれて 動けなくなる
金魚のような 細やかな鯉の群れ

彼等もその内 恋をするだろう
それが 愛に代わるのかどうか
見極めるよりも先に 内側に 閉じこもらないでね
何時だって 内輪話は楽しいもの
団扇片手に 右側ばかりを 見定めて 居たいのよ

名も知らぬ芝生の群生地
水芭蕉の花を思い出したら
一面のホワイトアウトを思い出した
もう直ぐだね
初冠雪した山も 多いみたいよ

そこかしこに散らばるトンボの群れが
塵のようにも 埃のようにも感じられ
少しだけ 計算高い瞳が 誇り高き角度で
ひっそりと うなだれる
首筋と 雲の隙間だけが
同じ色合いだった

★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・°


自由詩 首筋と雲 Copyright 藤鈴呼 2018-01-23 10:28:49
notebook Home 戻る  過去 未来