溶けていくもの
オイタル

さようなら あなた
私たちの住む家は
もうまもなく淡い春の陽に消えて
光る水面の陰にあの佇まいだけを残してしまうのです

さようなら あなた
胸が絞られるようでした あなたを見つめて
狭い家のリビングのテーブルの向こうとこちらで
窓からの冷たい光を背負ったあなたを見つめて

さようなら あなた
リビングに流れる細い流れが
時折迷い込む小魚の鋭い尾びれが
春の山脈にかかる霞におぼろに映されました

さようなら あなた
地上一〇〇メートルの激しい風に 跳ね狂った私でした
あなたをくるしめるつもりは
なかった ただ

さようなら あなた
私たちの澄んだ家は
もう これ以上もないほどに透き通って
溶ける雪面の少し上に あの
佇まいだけを残して
さような


自由詩 溶けていくもの Copyright オイタル 2018-01-21 19:53:12縦
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