不幸の天才
まーつん



優しさには牙をむき、
肩にかけてくれた毛布を切り刻み
寒い風の中怖い顔して笑う君が
ノイズ交じりのブラウン管に
白黒で映る

苦しみに
飽きることはない?
野の獣となった君の心は
猟師と勢子に追い立てられ
二枚のコンクリに挟まれた袋小路で
立ち往生してる

解けないパズル
絡みあった糸

温もりと優しさは
すぐそばに控えているのに
君は裸の肩を震わせて
冷たい床にうずくまったまま
見え透いた宿題を課して
この世界に送り出した神様に
怒りを抱いてた

その想いを
火の中から取り出した石みたいに
胸元に押し付けて体を温める

でも、
鋭い痛みで気づかされる
燃やしていたのは
自分の一部だと

顔の前に吊り下げられた
ニンジンに釣られて走る
ロバみたいに

誰かの描いた幸せを
追いかける為だけに走る
そんな操り人形になるのは
御免だと

冷え冷えとした
殺風景な部屋に一人
掻き立てた内なる火で
己を温めようとする君は

美しくて、痛々しくて
たった今生まれたばかりの
雛鳥みたいに傷つきやすく見えて

血に染まる羽を畳んだ裸の背中
そんな陳腐なイメージを
僕は愛し続ける

ほんとの君は
もっと複雑

解けないパズル、絡みあった糸
霧を集めて出来た人形

抱きしめたら消えていく


自由詩 不幸の天才 Copyright まーつん 2018-01-21 19:36:11
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