夢の向こうから
藤鈴呼


忍び寄る 紅葉の影
ぽつり ぽつりと 話し始める
呟きのようだ

一つは雨粒と化して
一つは涙と別れ
一つは空に還る

嗚呼 だけれども
葉が揺れるたび
切ないよ

どうにも出来ぬ物事が
この世には多すぎて
世知辛い

どんな辛さなのかって
薬味の全てを遣っても
表現できやしない

小口ネギでも 生姜でも 茗荷にもない痛み
キリキリと 這うような存在とも ちょっと違う
ほろ苦さ

第三のビールが
もう 当たり前になっている
横行している
蛇行している
匍匐前進など出来ぬ 横断歩道の上で
二人は 千鳥足

抱こうとしたら
引っ叩かれる
そんな 当たり前の摂理を
当たり前の生理加減で
整理 できない

拒絶できたら 楽なのにと
拍手の途中で
掌に
バタークリーム たっぷりと塗って

咀嚼した
パラリと落ちた葉の先に
巣食う テッポウムシ

紅葉も 感動も
台無しにしてしまう 虫

無視できぬ 存在だから
蹴散らすことも 出来なくて

★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・°


自由詩 夢の向こうから Copyright 藤鈴呼 2018-01-21 12:05:49
notebook Home 戻る  過去 未来