しずくのこえ
あおい満月
繭のなかで、
せめぎあいを繰り返した罪たちは
やがて大きくなり鏡の膜を
剥いで外へ出る。
そうして姿を見たものたちを、
石へと変えて時間を縫い潰していく。
*
ごみ捨て場の生ゴミの渦のなかに
白い生き物が生きていた。
皆からは黒く見えて、
忌み嫌われているが
それはとても白く美しい生き物だった
生き物は声を出すことが出来た。
まだ誰も聴いたことがない声だ。
一人の罪が、
舌を垂らしながら
生き物の前を通りかかった。
目を合わせる生き物と罪。
罪はすぐさま長い舌を出して、
生き物を巻き込み丸のみにした。
罪の喉の奥で、
生き物の鳴く滴の声が響いた。
**
罪が罪を見つけたとき、
罪はもう一人の罪を喰らうのか
互いの皮膚を噛み合いながら、
血のない血を流して
舐めあい切れない影を追いかけて
今日と明日がいれかわりゆく
地平線に思いをとかして
罪が今日の罪を終わらせてゆく
生きるということは、
見えないなにかを犠牲にする。
今でも、
繭のなかでせめぎあいながら
罪たちが生まれようとする。
丸のみにされる何者かの、
滴の声が鈴になって響く。
※過去詩です。
自由詩
しずくのこえ
Copyright
あおい満月
2018-01-20 21:15:18
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