こころの時間
ただのみきや

太陽が枯れ果てる時間

花が燃え尽きる時間

人の電池が切れる時間

はてしない 悠久の
儚く 束の間の

どこまでも希釈され
濃密に結晶する

必死に掬う指の隙間から零れ落ち
喉を潤すこともない真砂のような

神々が見る 
夢のような

――時間

酸の海に溺れている
横顔が彫られたコイン


一枚のレコードが終わる時間

半島からのミサイルが届く時間

転んでから涙を流すまでの時間

仕事を脱ぎ終えた時間

人を好きになって嫌いになる時間

話そうとしたことを忘れてしまう時間

約束が破られるまでの時間

円いグラスが鋭い破片に変わるまでの時間

誰かと一緒にカウントダウンした時間

大量に消費されて
塵と化し山となり

なのに跡形もなく寒々しい
荷物を運び出した部屋のよう

しぼり切った雑巾
涙ひと粒の猶予すらありもしない

最後の最後
微弱な電光

凝縮されてほとばしる
目眩めくるめく喜悲劇の

シーンと幕間の激しい明滅

光のサーフィン
時の波頭に追われて逃げて

――巧な入子細工
  こころの時間




               《こころの時間:2018年1月20日》











自由詩 こころの時間 Copyright ただのみきや 2018-01-20 20:02:33
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