詩とジャズの夜 ―ドルフィーにて―
服部 剛

ジャズの老舗しにせ・ドルフィーで
朗読会の司会をした

詩人達は数珠じゅずの言葉を…つむ
休憩時間に賑わう
暗がりの店内に紫煙はたゆたう

カウンターの隅に目をやると
頬に影差す白髪しらがの男が
目を瞑り、グラスを傾けている  

僕はマイクを手に
ジャズ奏者のトリオを紹介し
舞台脇の段差に腰を下ろすと
ライブは始まり

ピアニストの無数の指は
鍵盤の上に踊り
ギターの旋律とドラムの鼓動は
あ・うんの呼吸で絡み合う

司会者であるのも忘れ
ハイボールに火照る顔のまま
閉じたまぶたの裏の〝0コンマ1秒〟に
ドラムのスティックから弾ける
闇の火花が、視えた

日々の重たい宿題に
両手で頭を抱え
不格好な役に縛られていた
がんじがらめの夜の部屋から
ゆっくり腰を上げ
僕はメッセージを受信する


――思考よりも、速く


演奏が終わる
トリオは舞台を去り
拍手の波が静かに引いてゆく





自由詩 詩とジャズの夜 ―ドルフィーにて― Copyright 服部 剛 2018-01-05 18:40:21縦
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