散文詩と言う題名の散文詩
こたきひろし

ネェ
彼女は初対面の相手にそう切り出した。
「ネェ、罰金って今すぐ払わなければいけないの?」
「罰金じゃありません。反則金です」と白バイの警官は言ってきた。
「どっちでも構わないけれどさ」彼女が受けて言葉にすると、反則金は後日郵便局に納めて下さい、と若い警官は言ってきた。「今切符を出しますからそれを持っていって下さい」

直線道路の一本道についアクセルを踏んでしまった。前も後ろも一台も走っていなかったし、天気は良いし気分も良かったせいだろうか。
いきなりのサイレンに彼女は自分じゃないわよと思ってしまった。
白バイが追いかけてきて手で合図されて初めて自分だと気づいた。
道路沿いのコンビニエンスストアに導かれた。駐車場に入ると免許証の提示を求められた。
スピード違反だと告げられた。

あの日、大晦日の夕暮れに二人はラブホテルに入った。二人が出会って半年位がたっていた。
白バイの若い警官は彼女の恋人になっていた。
部屋に入るといっしょにお風呂に入り、それから部屋の冷蔵庫のビールを二人で飲んだ
飲みながら年末の番組をテレビでみた。紅白もみた。
旧年と新年の境目辺りでただの男と女になった。お互いの体の一部始終を確かめあって、重なりあい絡み合った。
「ネェあたしの事愛してるわよね?」
彼女が聞いた」
「もちろんだよ、決まってるだろう」
若い警官は答えた。
この日の為に彼は休暇願いを出していた。
警官は職務上一般女性に嘘偽りを口にするわけにはいかなかった。
「君はどうなんだい?僕の事愛してるのかな」
その質問に彼女は、さぁどうかしらわから分からないわと、警官には思わない答えが返ってきた。
「愛してるかどうかは分からないけど、最初あったときからセックスしてもいいとは思ったわよ」
彼女はあっさりと答えた。「男と女って結局はそれが決め手じゃないの」
愛なんて見えないし触れないんだからと付け加えて。
「だったらなぜ君は僕に愛を求めるんだ。おかしくないか?」
若い警官は職務のような気持ちになって質問した。
すると彼女は言った
「だって赤ちゃん出来ちゃうかもしれないのよ。こんなことしてたら。愛してくれない男とだったら、女は失うもの大きいじゃない。」
若い警官はそれ以上を言葉にしようとしたが、彼女は紅い唇でそれを塞いだ。

そんなのいいからもっとしようと、警官の耳に甘い息を吹きかけながら。


自由詩 散文詩と言う題名の散文詩 Copyright こたきひろし 2018-01-03 10:35:49
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