みなもと
あおい満月

皮膚の毛穴から
声にならない呟きが聴こえてくる
ひとつ、ふたつ、
呟きはふえていき
大きくなりやがて叫びに変わる
叫びが全身を駆けめぐるとき
私は目覚めて
意識のなかの
ひとつの物語の存在を知る
物語の輪郭を描くために
まだ明けやらぬ朝のなかで
キイボオドを叩く
キイボオドから、
じゅわりと血が滲む
その血には匂いがある
匂いのなかに声がある
声は聴いたことがない
旋律のなかで笑う
その笑いは、
めぐりめぐる悲しみから生まれた
遥か昔、
母親の体内の海を漂っていた頃に
手のひらに感じていた一握の
記憶の源だ

皮膚の叫びが詩になり
ひとつひとつ
物語が花ひらく
詩が血の流れとなり
海へと注がれ
やがて一本の樹のような
物語になる


自由詩 みなもと Copyright あおい満月 2018-01-02 05:14:38縦
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