「眼疾」
泉由良

青い 青い 青い
青いものが見えるのと彼女は云う



彼女というのは私なのだが
私はわたくしどもに勝てはしないので彼女を突入す。
あゝ、憎きわたくしども現代詩! 何故なら彼等は日頃己れをわたくしなどとは呼ばないだらうと思うからなのであつた。
わたくしなどとは関わらず、私は詩を書く体勢である。




わたくしなどとは関わらず
彼女は
青いと云う
青いものが見えるの
今日も寝てません


青い 青い 青い
彼女は青いと繰り返す
眼疾は烟り
神経が病んでいることはひととして劣っていますか?
いいえそうではなく
それは罪ですか
ならば彼女は生まれつき大罪人だ
視界さえ罪びとなのだった
ヴァイオリンの音色が聞こえる
all the lonely people
no one was saved
今日も寝てません
他人とも蒲団とも夜中とも友とも共々
独りでした
寝てません


眠りを忘れて幾日経ったろう
義務の為目蓋! 眼の蓋! 蓋かよ! 蓋! を閉める 開けては閉める 開けては閉める
出たり入ったり 出たり入ったりする
蓋かよ、真名子!
目蓋の裏に映る鮮やかな色彩
これも疾患か
或いは軽薄か
電灯を消した部屋で
電灯の隅にある小さな碧色の光だけ
点っている 青い


青い 青い 青い
青いものが見えるの
曇り空を見上げたときに
視界に/世界に 群青が
群像の陰
群衆の聲
今日も寝てません


寝たら起きちゃう
不便なんです


彼女は誰にもそれを云わない
幼い描けない喋らない戻らない騒がない批難訓練
整列してください 日々よ
わたし批難なんか平気です
わたし批難なんか逃れます!
わたし批難なんか気にしません!
わたし否定など全き身に受けません!


今日も寝てません
珈琲のんでません
朝、きます


この前は五分寝ました
床で
今日は幾らか泣きました
トイレの前で
彼女の供述を丁寧にノートとると撮る録る捕る
あなた栄養摂りなさいよ
寝てないなら
シャワーを浴びて
服を脱いで
いえわたし寝てません
他人とも寝てません
朝だし
日中寝たりしません
光のなか裸は曝さないです
今日も寝てません

日中なるべく寝ないでくださいね
夜眠れませんから
あと栄養摂って


何処からですか?



そのあと三週間くらいして
五日ほど大体眠った
寝台、堅い
朝、きます
青もまたくる

 



自由詩 「眼疾」 Copyright 泉由良 2017-12-28 21:03:05
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