歩行者の唄
服部 剛

旅人は今日もそぞろ歩いてゆくだろう
「良い」と「悪い」を越えた
地平を目指して

脳裏をぎるいつかの別れは
忘我の歩調と
風に紛れて

すでに
体の無いあのひと
密やかな唄を囁いている

今日も
鼓膜に消えない唄声を聴きながら
旅人は繰り返しの日々を通過してゆく

明日も出逢う旅の仲間と
目と
目の
合う、瞬間を求めて

無数の鏡をすり抜けて
また一枚
すうっと足を踏み入れる

我を忘れて闊歩するほど
玉葱の皮の剥かれゆく
<聖玻璃せいはり時間>の――只中へ  






自由詩 歩行者の唄 Copyright 服部 剛 2017-12-26 21:31:19
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