無題
◇レキ

  心と所作と雨の答え



雨 雨 あがるな

心を砕き続けてよ
痛みを 忘れないように
鮮やかさたちには血の色も
数多の原色 心が染まる
その危うさに 恐怖に飲まれ
明日の自分さえ分からなくとも





雨 雨 あがれ

陽射し 雲間に美しく
脆く崩れる無意味たちに
美しさをさり気なく まとわせて
他とのまろやかさを そして
自分の生の執着でさえ
暗闇から救うと言おう






どうか 心

ちぎれ 零れ落ち続ける内側を



どうか 所作

磨かれ やさしくやわらかな外側を





  梅の実



落ちた僕らの煌めきを
吸って静かに樹が生える

土に染み込む苦しみを
滋養にわさわさ葉が茂る

霧にたゆたう寂しさに
あてがうように実を付ける

泣いてるわけじゃ ないの
泣いてるのは 君かなあ なんて
ほとほと落ちる 毎日落ちる
肌色の実を


鳥や虫や獣と
共に拾うの

僕ら



さりげなく
轟々と生きる樹々の
転生を頂く僕らがいる

燃えながら
ちりちりと生きる僕らの
儚い虚しさを喰らう樹々がある





  日々



嘘と無さしかないこの世界に
訴え続ける一人の眼差しがある

どんなに嘘で自制させても
どんなに無さで埋め合わせても

 本当 が唯一ここたった今目の前にいる

泣いてもいいですか 笑ってもいいですか
奪いたい思いが悲しむ




吹きすさぶ闇の嵐の中に
決して消えない小さなともし火がある

灯りを掲げると見えなくなる

 本当 の小さなともし火がある

悲しいな 悲しいな
摑めたら 掴めたら




状況の絡まり蠢く関係の中に
決して鏡に映らない一言がある

呟いてみると消え去ってしまう

 本当 の思いがある

気にしない 気にしない
忘れよう 忘れよう




満ち満ちた緑の中に
埋もれそうな悲しみが光る

手に取ってみると霧散してゆく

 本当 の一欠けらの涙がある

終えよう 終えよう
僕が透かすと 虹色に溶けて




互いの思い見つめる扉に
去らせない小さな鍵がある

ただ少し指を触れ カチリと放てばいい悲しみを
させないように窓の外から風が笑って

 本当 は未熟な僕にとって救いだったから


代わりに小さく唄うのです


 本当 は
僕の生そのものに訴え続けるのです
これからも僕に溶けるのです

だからそれでもいいのです

君からもらった 本当 は
しなやかに形を変えながら
僕の心に生き続けます





  後悔



靉靆と雲は流れて
壊れる方向であっても
恋は
甘やかで鋭利


靉靆とした心に
にわか雨と春雷
洗いきれずに


靉靆を外して歩いた僕は
タガまで外してしまったみたいだ







言葉は心が生むのなら

言葉は心が生むのなら
生きている面白さが
真っ黒な顔をしていても

現実ばかりが
世界を成しているわけじゃない

言葉は心が生むのなら

見えないものもまた
世界には確かに組み込まれている

歯車を
光は動かす力を持っている

言葉は心が生むのなら






必ずあり得る約束事を
踏み倒して絶望がゆく

別に大したことじゃない?

ただ今日あった一日が
ごうごうと後ろに去ってゆく

どれほど日々が
どれほど生きている今が





鉈を振り下ろした
樹の断面は
一瞬の鮮やかさを時間に捨てて
忘れたように
縮こまるから
困る






落ちてゆく

関係は罪を内包している
関係という罪でゆく
関係という罪が笑って
関係という罪で歩く
関係が生かし
関係が人を苦しめる
関係で人はきらめいて
関係が落とし込めて

最後に小さく微笑んで見せてよ





こんなに明るい朝日が笑う

時を瓦解させるほど
苦しみは心握りつぶす強さで

止まらない日々を忘れた夜明けに
世界はこれほど美しかったと知る





当たり前な今日がある事が
どれほど幸せなことか

叱責してくれる過去があることが
どれほど幸せなことか

焦がされる未知があることが
どれほど幸せなことか

思うほどに儚い
単純な強情さを持つ哀しみそのものを
忘れないように

朝日に透明な心を透かす






空っぽと
変わらない乏しさは
掴めないまま慣れすぎたから
忘れた
気付けばこんなに寒い


自由詩 無題 Copyright ◇レキ 2017-12-23 20:34:04
notebook Home 戻る  過去 未来