そらの珊瑚

忘れていたことを
ある日ぽっかりと思い出す

潮が引いた砂地で
貝が静かに息をしているでしょう
見ればそこかしこで
生きていることを伝える
そんな穴が開き始めて
私の足裏とつながる
私の体とつながる
伸ばされた触手が
私の奥底とつながる
わたしが忘れていた時間も
あなたはここで
ずっと生きていたのね

何かになれると思っていた頃
海に架かる虹のむこうにさえ
泳いで行ける気がしていた

虹はそこでしか見つからないのに
私は私でしかないのに

気づけば
脱いできた靴はひどく遠く
小舟は翳り始め
夕暮れだけがすぐそばにある

波打ち際は白く泡立ち
素足を射るように冷たいけれど
生と死があやうくまじわるここで
ばかみたいにまた
優しい幻を探している







自由詩Copyright そらの珊瑚 2017-12-23 12:30:20
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