空気
鷲田

空気を伝う言葉の影
盲目の力点は
硬直した体を伝い
脳の延髄をも締め付ける

空気に色はなかったが
硬度は確かにあった
そこでは発する声が震えもするし
伸び伸びと勢いづくこともあった

重ねた年月は
主張という保身を形作り
やがて破滅へと向かう
理は歴史となり
また空気を凍らせる

破壊とは何だったか
それは緊張の溶解に過ぎず
犠牲は欲求が捨てた
一つの結論である

忘却の部屋には
お湯を注ぐ音が柔らかく響く
犬はそれを待ちわび
やがて食す

何気ない日常の空気は
やはり透明であった


自由詩 空気 Copyright 鷲田 2017-12-22 23:24:45
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