林檎
あおい満月

もっともっと、
きみを抉じ開けてしまいたい
きみというきみのなかの
どろどろとした異臭を放つ林檎を
とりだして噛み砕いて食べてしまいたい

ぼくをへだてる外の世界は
あまりにも予定調和で
皆左手の薬指にそれぞれの家を持っていて
ぼくはもう、
そういう世界からは布を鋏で切り裂いていくように
すり抜けてここまできた

けれど何故だろう
今はとても寒くて、寂しくて
誰かにそばにいてほしかった
そんなときに、君と出会った

全身黒い毛で覆われたきみは、
ぼくと同じ目をしていたっけ
自分自身を隔てる世界に
生きているようで
入り込んでいくことができない
今もそれはかわらないけれど

ぼくはきみを裸にして、
きみの内部をナイフで切りつけ
きみのなかに内在する
本当の美しさの蜜を舐めた

その蜜の味が今でも忘れられない
だから、ぼくはきみを守る
やがてぼくたちは腐敗するだろう
それでも、ぼくはきみと抱き合って
灰皿となる海のなかに溶けていこう


自由詩 林檎 Copyright あおい満月 2017-12-22 05:48:45縦
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