少年
葉leaf


少年は旅立つ前に
一人の少女を殺した
少年自身である一人の美しい少女を
少年は少女の亡骸とともに旅立つ
世界には絶対的な何かがあると
少年は信じている
絶対的な何かはどこにでも存在し
少年はそのヴァリエーションをなるたけ多く集めようと思っているのだ
少年の肌はとても白い

少年は大人になりたくなかった
大人になるのは有限な人生に取り込まれることだ
有限な人生の必然的な成熟
幼いままであることが
開かれてあることで
深さを持つことだった
だから彼は二十歳になった日に泣いた
死へ至る涙だった

少年は青春という自我の混迷に巻き込まれる
幼い言葉が虚空にかき消され
幼い悩みが深淵へ消えていった
絶対的な青春が徐々に解体され
他者や社会が自我と関連付けられていく
少年は青春を殺せなかった
青春は何度でもよみがえってくるのだった

少年は老衰した
老衰して青年になった
柔軟な倫理と臨機応変な身のこなしで
他者や社会という無限の存在と
折り合いをつけていく
絶対的なものはどこにもなかった
ただ無限なものはいくらでもあった
青年の人生の有限性に比べ
世界はあまりにも無限だった
青年は無限を前にひざまずいた


自由詩 少年 Copyright 葉leaf 2017-12-22 05:06:30
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