あしもとの小石を拾い上げること
ホロウ・シカエルボク

ベルベットの下には
死体からこぼれ落ちる
血液のような
ぬるりとした感触があり
流れている音楽には温度がない
倒れる時のことを思いながら
ステップを踏むバレリーナ
人生は、その
くるぶしの痛みにとてもよく似ている


世界有数の浮かれた恋人同士が
「戦争は終わった」と今年も口ずさむ
別に殺し合いがなくなったわけじゃないのに
いつだってそう、連中が
白か黒かと唾を飛ばして語り合うのは
馬鹿にも見えるようなことについてばかりさ
飢餓に見舞われて痩せ細る子供達を見て涙を流しても
近所でうずくまってるやつのことなんか気にも止めやしない
ニュースにならなければ
かなしいことなんてなにもないのさ
みんなクリスマスの支度にあくせくしながら
知り合いと酒を飲んで大笑いするだけさ


手の届かない話ばかり
そこにはなんの責任も背負うことがないからさ
そうだぜ、募金を愛だという気持ちがあるのなら
そんな気持ちはもっと
現実的なことに使われたっていいはずさ
みんなそんなことに関心なんか少しもありはしないくせに
いかにもな顔をして語り続けるのさ
幸せなことが後ろめたいのかい
飽食を雄弁に語っているみたいな
水風船みたいな自分の身体が恥ずかしいんだろう
すぐそばのことに目を向けるのさ
大事なことは新聞や電脳の世界には書かれてはいない
本当は誰だって自分で見つけて選ばなければいけないことさ
でもそんなことに気づかないやつが大勢居て
一番簡単なお題目にぴったり寄り添って
先にゴールしたみたいな顔をしているのさ
分からないのかい、そんなに早くゴールしてしまったら
残りの人生はその余韻をリピートして生きるだけになるんだぜ
一番遠くのゴールを目指さなくちゃ
一番遠くのゴールを目指すことだぜ
長すぎる人生が短いと感じるくらいの
とんでもない道を選んでみることさ
旅と同じだ
移動した分のことしか俺たちは知ることが出来ない
だったらなるべく遠いところまで
行ってみるのが正解だとか思わないかい?
一番遠くのゴールを目指すことさ
きちんと選んだ道を行くことが出来れば
そいつはわりと出来のいい
人生ってもんに見えるのさ
世界のことなんか
気にしてるヒマはないはずだぜ
ひとりひとりが
まがいものじゃない自分を生きることが出来れば
その集合も自然に変わって行くはずさ
イマジンなんて拙い聖書みたいなもんさ


ベルベットの下には
死体からこぼれ落ちる
血液のような
ぬるりとした感触があり
流れている音楽には温度がない
大切なのは、そう


そんな気分になってしまうのはどうしてなのかということを
いつでも考えてみるべきなのさ


自由詩 あしもとの小石を拾い上げること Copyright ホロウ・シカエルボク 2017-12-17 06:56:53
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