蓮華温泉
藤鈴呼


散策コースの奥にある 硫黄温泉
一度 行ってみよう!って 云おうと思ってた
追い駆けて来るように フツフツと湯が描かれ
周りの景色と ゆっくり 同化していくようだ

足元に広がる 四角い箱
思わず手を差し伸べた貴方が ヒヤッと叫ぶ
ヒヤッとしながら見つめると ひゃっこいよって アナタ
思わず笑う余裕なんて 当時の私には なかった

車に置き去りの 買ったばかりの登山靴
なんて大袈裟なモンじゃあないけれど
本当に一張羅
サンダル履きでも大丈夫だって 言ったじゃない
坂道は 吐きそうな程 石がゴロついて
空を眺める代わりに 貴方の後姿を 所在哭く見詰めた

ここで待っててと言われた後で シーンとした山の奥
周りの葉は 早くも紅さに包まれていて
誰の足音も聞こえない
ガサリと音がしたら 熊かも知れないと 横に遊ぶ
リュックが揺れる度 ワタクシの存在を示す鈴が
チャリンと嘆く

落とした小銭の色と 運のツキを掛けて
夜空を見上げる頃までには
どんなに良い香りの温泉も 成りを潜めて夢の奥
桃源郷に行けなかった分
少しだけ 叫んでみようかな

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自由詩 蓮華温泉 Copyright 藤鈴呼 2017-12-12 09:30:19
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