家族という死体のうえに
田中修子

わたし パソコンでした。

あなたがたは小学生のわたしにもコマンドを打ち込みます
わたしはパソコン
かんぺきなセリフと かんぺきな笑顔。

おハシを止めるとおかあさんは
すうっと無表情になるの、胃がいたくてもう入らないよ。
「この食材は添加物が入っていないからとってもいいの」
「だね! わたしとっても恵まれてるね!」
ムシャムシャムシャ

食卓の話題は今日も戦争のはなしです
お父さんは大げさに手をふってヒットラーみたいだなぁ。
「まぁ こんな政権を選んだ 国民が悪いのさ」
「だね! 自衛隊にはそういう人がいって かわいそうだわ!」
ムシャムシャムシャ

まぁ なんていい子 ユーモアのある子

ひんやりしたトイレがたいせつなおともだち
家族という汚濁をながしてくれる。

中学のおしまい
パソコンは くたびれきって
ちょっと 壊れてしまいました。

「オカーサン
オネガイシマス ワタシヲ ミテー
オトーサン
オネガイシマス ワタシヲ ミテー」

すがってわめいてもこわばった顔で
わたしをみてくれません。

ああ、このひとたち、ロボットなんだ。

ふっと気持ちがわるくなって
からだにマチ針を刺しました。
血が出た。わたし まだ にんげん みたい。

泣くことも笑うこともできなくなって老婆みたいな顔が情けなくなり
下を向いて歩くようになってしばらく 灰色の道路だけを覚えています。

さいきんやっと広い空を、木々を、澄んだ川の色を
どれだけ 耳を塞がれ 目隠しをされて きたのか。

今年の冬は雪がふるそうです。
すべてをすいこむような雪の音をききたい
そうして冷えた月のような真っ白さが
世界中どこにでも転がっている
わたしたちの死体のうえにふりつもります。


自由詩 家族という死体のうえに Copyright 田中修子 2017-12-11 07:52:02縦
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