筆と響き
木立 悟





おまえではない
おまえではない
絵の具を燃やす手
土に火の絵を描きつづける手


隠れていた猫も虫も去り
原はどこまでも静かになる
鳥も鳥を話さなくなり
常緑樹のなかでうなずくばかり


双つの羽の片方が
速くはばたき溶けつづけ
後には何も残らない
雪の穂のように残らない




狼 狼
聴こえぬ光
はざま埋める色
狼 狼




点滅を読む指
境いめを越える指
穏やかで冷ややかな
雨のつらなり


夜の子の声
滴の音
光は吼える
鈴と鈴を結ぶ声


窓の外の暗さだけが
此処が何処かを教えている
消えてしまった狼の断片
内に内に内によみがえる



















自由詩 筆と響き Copyright 木立 悟 2017-11-23 18:52:08縦
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